ENCYCLOPEDIA ・ 獣脚類
タルボサウルス
Tarbosaurus ・ 1955年命名
モンゴルのゴビ砂漠で多く見つかるアジア最大級のティラノサウルス類。体に対する前肢の比率は同科で最も小さい。
- 分類
- 獣脚類 ・ ティラノサウルス科
- 時代
- 白亜紀後期(約7200万〜6600万年前)
- 全長
- 約10〜12m
- 食性
- 肉食
- 発見地
- モンゴル、中国
ネメグト層(ゴビ砂漠)
特徴
タルボサウルスは、白亜紀後期マーストリヒト期のアジアにいた大型のティラノサウルス科の獣脚類である。最大の標本は全長約10〜12m、体重約4.5〜5トンに達したとされる。ほかのティラノサウルス類と同じく二足歩行の捕食者で、S字に曲がった首で頭を支え、背骨と尾は水平に保っていた。
頭骨はティラノサウルスのように高いが、後ろの部分の幅が狭いため、目は真正面を向いておらず、ティラノサウルスのような両眼視はできなかったと考えられている。あごには58〜64本の歯が並ぶ。下あごの角骨の外側にある隆起が歯骨の後ろとかみ合う独特の固定のしくみがあり、この仕組みはタルボサウルスとアリオラムスにしか見られない。腕は体に対してティラノサウルス科で最も小さく、手には爪のある指が2本しかない。
発見と命名
1946年、ソ連とモンゴルの合同調査隊がゴビ砂漠のネメグト層で大きな獣脚類の頭骨と椎骨を見つけた。1955年、ソ連の古生物学者エフゲニー・マレーエフはこれをティラノサウルス属の新種ティラノサウルス・バタールとし、同じ年に別の頭骨をタルボサウルス・エフレモヴィとして新属を設けた。属名はギリシャ語で「恐ろしいトカゲ」を意味し、種小名バタール(bataar)はモンゴル語の「英雄」のつづり違いである。
1965年、アナトリー・ロジェストヴェンスキーはマレーエフの標本がすべて同じ種の成長段階の違いだと認め、タルボサウルス・バタールの組み合わせにまとめた。その後のポーランドや日本との合同調査などで化石は増え、15以上の頭骨やいくつかの完全な骨格を含む30体以上が知られている。
分類と研究
現在、多くの研究者はバタール1種だけを認めている。北アメリカのティラノサウルスのアジアの種とみなし、タルボサウルスという属名は不要とする専門家もおり、同じ属でないとしても両者はとても近い関係にあるとされる。かつてはモンゴルのアリオラムスが最も近いともされたが、現在は否定されている。
脳函の型の研究から、脳のつくりはティラノサウルスとよく似ており、嗅球が大きく、鋭い嗅覚をもっていたと考えられている。ネメグト層の生態系の頂点に立つ捕食者で、曲竜類のサイカニア、ハドロサウルス類のサウロロフス、竜脚類などの大型恐竜を獲物にしていたとされる。化石はモンゴルと中国のゴビ砂漠周辺でしか見つからず、両国は輸出を禁じているが、密輸された標本が2012年にアメリカで競売にかけられ、裁判を経てモンゴルに返還されている。
見られる博物館
- 福井県立恐竜博物館日本 福井県勝山市 ・ 全身骨格
- 丹波市立たんば恐竜博物館日本 兵庫県丹波市 ・ 全身骨格
- 京都市青少年科学センター日本 京都府京都市伏見区 ・ 全身骨格
- 岡山理科大学恐竜学博物館日本 岡山県岡山市北区 ・ 幼体・成体の頭骨と全身骨格
- 神流町恐竜センター日本 群馬県多野郡神流町 ・ 全身骨格
- 北海道大学総合博物館日本 北海道札幌市北区 ・ 頭骨
- HOKUSHU仙台市科学館日本 宮城県仙台市青葉区 ・ 頭骨
- フランス国立自然史博物館 古生物学・比較解剖学館フランス パリ ・ 複製骨格
- モンゴル恐竜中央博物館モンゴル ウランバートル ・ 返還された全身骨格
- メルボルン博物館オーストラリア ビクトリア州メルボルン ・ ダイナソー・ウォーク
展示された特別展
- 丹波竜発見20周年記念 特別展2026「大恐竜展 ~新発見の堅頭竜類ザヴァケファレ~」2026年10月10日〜2027年2月23日 ・ 丹波市立たんば恐竜博物館 ・ 全長12mの全身骨格
- 特別展「化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」2022年7月16日〜2022年10月10日 ・ 国立科学博物館 ・ ゴビ砂漠産
- 巡回展「ポケモン化石博物館」2021年7月4日〜2021年9月20日 ・ 三笠市立博物館 ・ 全身骨格標本(上野会場)
- 2019年度特別展「恐竜の脳力 ~恐竜の生態を脳科学で解き明かす~」2019年7月12日〜2019年10月14日 ・ 福井県立恐竜博物館 ・ 半割した頭骨
- 特別展「ティラノサウルス類 ― 一族に会おう」2013年11月23日〜2014年7月27日 ・ オーストラリア博物館 ・ アジアの大型種
- 恐竜博2005 ―恐竜から鳥への進化―2005年3月19日〜2005年7月3日 ・ 国立科学博物館 ・ モンゴル産のアジアのティラノサウルス類
この恐竜が登場する本
- 化石ハンター展 ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣 特別展日本経済新聞社、日経サイエンス(編) ・ 図録アーカイブ
- ポケモン化石博物館 Pokémon Fossil Museum相場大佑(執筆) ・ 図録アーカイブ
- 大恐竜展 ゴビ砂漠の驚異 Amazing dinosaurs of the Gobi Desert国立科学博物館、読売新聞社(編) ・ 図録アーカイブ
- 恐竜博2005 恐竜から鳥への進化真鍋真(監修)、朝日新聞社事業本部(編) ・ 図録アーカイブ
この恐竜が登場する作品
- プレヒストリック・プラネットドキュメンタリー ・ 2022
同じ獣脚類の恐竜
同じ白亜紀後期の恐竜
同じ国(モンゴル・中国)で見つかった恐竜
出典
数値は研究により変わる概数。内容は2026年10月時点。